間質性肺炎
間質性肺炎とは、肺の「間質」と呼ばれる肺胞の壁や周囲の組織に炎症が起こり、やがて線維化(硬化)して肺の弾力性が失われる病気です。肺胞が酸素を取り込む能力が低下し、呼吸困難を引き起こします。
原因は多岐にわたり、以下のように分類されます:
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特発性間質性肺炎(IIPs):原因不明。代表的なものに特発性肺線維症(IPF)がある。
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膠原病関連:関節リウマチ、全身性強皮症などの自己免疫疾患に伴う。
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薬剤性:抗がん剤、抗生物質などによる副作用。
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環境因子:カビ、鳥、ほこりなどによる過敏性肺炎。
主な症状
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乾いた咳(空咳)
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労作時の息切れ(階段や坂道で顕著)
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疲労感・体力低下
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体重減少・食欲不振
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ばち指(指先の変形)
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進行すると安静時にも呼吸困難が現れます。
診断
1.問診と身体所見
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主訴:労作時の呼吸困難、乾性咳嗽(空咳)が多い
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既往歴・職業歴・環境因子:膠原病、薬剤使用歴、鳥飼育、農業従事など
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身体所見:聴診で両側背部にfine crackles(捻髪音)、ばち指の有無
2.画像診断
胸部X線
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網状影、すりガラス影、肺容積の減少などが見られるが、初期には正常なこともある
高分解能CT(HRCT)
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最も重要な画像検査
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蜂巣状陰影(honeycombing)、牽引性気管支拡張、すりガラス影などの分布と形態を評価
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UIPパターン(特発性肺線維症に特徴的)やNSIPパターンなどを識別
3.肺機能検査
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拘束性換気障害:肺活量(VC)や1秒率(FEV1)は保たれるが、肺容量が低下
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拡散能(DLCO)低下:ガス交換能力の指標として重要
4.血液検査
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KL-6、SP-D、SP-A:肺胞上皮細胞障害のマーカー。間質性肺炎の活動性を反映
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自己抗体:膠原病関連肺炎の鑑別に有用(抗核抗体、抗CCP抗体など)
5.気管支鏡検査・肺生検(必要時)
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気管支肺胞洗浄液(BAL):細胞分画から疾患の傾向を推定
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経気管支肺生検(TBLB)または外科的肺生検:病理組織による確定診断が必要な場合に実施
6.多職種による総合診断(MDD:Multidisciplinary Discussion)
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呼吸器内科医、放射線科医、病理医が連携し、臨床・画像・病理所見を統合して診断
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特発性肺線維症(IPF)などの診断にはMDDが推奨される
治療
間質性肺炎は、肺の間質に炎症や線維化が生じる疾患群であり、進行性の呼吸障害を伴うことが多く、治療には病型の判別と長期的な管理が必要です。特に特発性肺線維症(IPF)など一部の病型では予後不良であるため、早期介入が重要です。
治療の注意点
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病型の正確な診断が治療選択に直結する(IPF、NSIP、COPなど)
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定期的な肺機能検査と画像評価により進行度を把握
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急性増悪の予防には感染対策と環境管理が重要
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多職種連携(呼吸器内科、リハビリ、薬剤師、看護師)が治療の質を高める
1.薬物療法
抗線維化薬(IPFに対して)
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ピルフェニドン:炎症性サイトカインの抑制作用
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ニンテダニブ:チロシンキナーゼ阻害薬。線維化進行を抑制
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いずれもIPFの進行を遅らせる効果があり、早期導入が推奨される
ステロイド・免疫抑制薬
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膠原病関連間質性肺炎や急性増悪時に使用
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プレドニゾロン、タクロリムス、シクロホスファミドなど
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長期使用には感染症や副作用への注意が必要
2.支持療法
在宅酸素療法(HOT)
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安静時または労作時の低酸素血症に対して導入
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酸素飽和度(SpO₂)や動脈血ガス分析に基づいて判断
呼吸リハビリテーション
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有酸素運動、呼吸筋トレーニング、栄養指導など
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運動耐容能の改善とQOL向上に寄与
ワクチン接種
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肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンの定期接種が推奨される
3.重症例への対応
急性増悪時
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高用量ステロイドパルス療法
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抗菌薬併用(感染症との鑑別が困難な場合)
肺移植
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若年者や進行性で他治療が無効な場合に検討
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適応評価と待機期間が必要