睡眠時無呼吸症候群(SAS)
(いびき治療)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に繰り返し呼吸が停止(無呼吸)または低下(低呼吸)する疾患です。無呼吸が10秒以上持続し、1時間に5回以上繰り返すと診断対象となります。睡眠の質が低下し、日中の過度な眠気や注意力の低下を引き起こすほか、心血管系への影響も問題視されています。
治療を受けない場合、以下の合併症リスクが増大:
- 高血圧、心不全、不整脈
- 心筋梗塞、脳卒中
- 2型糖尿病
- 認知機能低下
治療によって睡眠の質が改善され、QOL向上とともに合併症予防にもつながります。
睡眠時無呼吸症候群の原因
主な病型と要因
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):
上気道の閉塞(舌根沈下、扁桃肥大、肥満など)による空気流通の障害。
いびきは、のどの空気の通り道(上気道)が狭くなり、空気が通るときにのどが振動して起こります。さらに、空気の通り道が完全にふさがれてしまうと、一時的に呼吸が止まる「無呼吸」という状態になります。
肥満があると、のどのまわりに脂肪がついて空気の通り道が狭くなりやすくなります。また、仰向けで寝ると舌のつけ根やのどの奥の組織が下がり、通り道がふさがれてしまうことがあります。これを「舌根沈下」といいます。実際に、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの約6割は肥満があるといわれています。
そのため、体重を減らすことは、睡眠時無呼吸症候群の改善につながります。さらに、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の予防にも役立ち、動脈硬化の進行を防ぐ効果も期待できます。
また、顎が小さい方や舌・扁桃が大きい方も、のどの通り道が狭くなりやすく、無呼吸のリスクが高くなります。慢性的な鼻炎がある場合も、呼吸がしづらくなるためリスク要因になります。
- 中枢性睡眠時無呼吸(CSA)
脳幹の呼吸中枢が一時的に機能停止し、呼吸指令が出なくなる状態。
- 混合型
OSAとCSAの両方の病態が混在するタイプ
睡眠時無呼吸症候群の主な症状
- 夜間の症状
激しいいびき、呼吸停止の目撃、頻回の中途覚醒、多尿
- 日中の症状
強い眠気(居眠り運転など危険を伴う)、集中力・記憶力の低下、起床時の頭痛や口の乾き、抑うつ傾向・不安感
睡眠時無呼吸症候群の診断
1.問診・スクリーニング
- いびきの有無、眠気、生活への影響などを確認
- エプワース睡眠尺度(ESS)による定量評価
| 眠くなることが多い | 時々眠くなる | まれに眠くなる | 決して眠くならない | |
| 1. すわって読書をしているとき | 3 | 2 | 1 | 0 |
| 2. テレビを見ているとき | 3 | 2 | 1 | 0 |
| 3. 人の大勢いる場所(例えば会議中や劇場など)で座っているとき | 3 | 2 | 1 | 0 |
| 4. 他の人の運転する車に、休憩なしで1時間以上乗っているとき | 3 | 2 | 1 | 0 |
| 5. 午後に、横になって休憩をとっているとき | 3 | 2 | 1 | 0 |
| 6. 座って人と話しているとき | 3 | 2 | 1 | 0 |
| 7. 飲酒をせずに昼食後、静かに座っているとき | 3 | 2 | 1 | 0 |
| 8. 自分で車を運転中に、渋滞や信号で数分間、止まっているとき | 3 | 2 | 1 | 0 |
11点以上だと睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いと考えられます。
2.簡易検査(在宅可能)
- 携帯型睡眠検査装置で酸素飽和度・呼吸パターンを記録
この検査は在宅でも検査が可能で入院する必要がありません。当院では現在この検査を行っておりますので、ご希望の場合はお申し出ください。
3.終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
- 医療機関で一晩かげて行う精密検査
- 脳波・筋電図・眼球運動・心電図・呼吸流量など多項目測定
こちらに関しては入院が必要になるため、近隣の総合病院を紹介させていただきます。
睡眠時無呼吸症候群の治療
1. 生活習慣の見直し
- 減量(肥満改善)
- 禁煙・禁酒
- 睡眠姿勢の調整(側臥位推奨)
2. CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
中等症〜重症OSAに推奨される第一選択

鼻にマスクを装着し、機械から圧力をかけた空気を送ることで気道を広げ、無呼吸・低呼吸を改善します。副作用のリスクがなく効果が高いことから、先進国では睡眠時無呼吸症候群の治療として最も多く実施されています。治療開始日からこれまで起こっていた起床時の頭痛や倦怠感、日中の激しい眠気による集中力・注意力低下などの症状がすぐに治まります。なお、この治療は睡眠時の無呼吸・低呼吸を防ぐためのもので、根本的原因となる睡眠時無呼吸症候群を改善することはできません。マスクを装着せずに寝た場合はこれまで通り無呼吸・低呼吸が起こります。以前は機械が大きく音も大きかったので治療を途中で止めてしまう方もいらっしゃいましたが、昨今は機械が小型化して音も小さくなったため、以前止められてしまった方にもお勧めできます。お気軽に当院までご相談ください。
3. マウスピース(口腔内装置)
- 下顎を前進させ、気道を拡張
- 軽〜中等症のOSAに有効
4. 外科的治療
- 扁桃摘出、鼻中隔矯正、上顎拡張手術など
- CPAPや装置が使用困難な場合に選択
豊春康栄クリニックの睡眠時無呼吸症候群の診療
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当院では、睡眠時無呼吸症候群に対する簡易検査およびCPAP治療の外来管理が可能です。
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また、睡眠時無呼吸症候群に合併しやすい高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病についても、当院にて継続的な治療を行っております。
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さらに、入院による精密検査をご希望の方には、対応可能な専門医療機関をご紹介いたします。
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歯科装具による治療が適している患者さまには、装具作成の経験が豊富な歯科クリニックをご案内いたします。