慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺に慢性的な炎症が続き、さらに気道が狭くなることで呼吸がしづらくなる疾患の総称です。 主な原因は喫煙ですが、大気汚染などの環境要因や、遺伝的な体質が関与することも知られています。
また、COPDは進行性の疾患であり、時間の経過とともに症状が徐々に悪化する傾向があります。 そのため、早期の診断と適切な治療が、症状の進行を抑えるうえで特に重要です。

主に次の2つの病態が含まれます。
■ 慢性気管支炎
気管支の内側に炎症が続くことで、咳や痰が頻繁に出る状態です。 また、炎症によって気道が狭くなるため、空気の流れが妨げられ、呼吸がしづらくなることが特徴です。
■ 肺気腫
肺の小さな空気袋(肺胞)が破壊され、酸素を効率よく取り込めなくなる病態です。 その結果、息切れが起こりやすく、少しの動作でも疲れやすくなることがあります。
COPDの主な症状
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- 息切れ:特に運動時や階段を上るときに感じることが多いです。
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- 慢性的な咳、痰の増加
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- 疲労感:酸素不足により、日常生活で疲れやすくなります。
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- 胸の圧迫感:呼吸がしづらく、胸が重く感じることがあります。
COPDの診断
症状の背景や肺の状態を総合的に評価するために、複数の検査を組み合わせて行います。以下は、一般的に実施される主な検査内容です。
■ 病歴の聴取
まず、患者さんの症状、喫煙歴、家族歴、職業歴(特に粉塵や化学物質への曝露)などを詳しく伺います。 これにより、リスク要因を総合的に評価します。
■ 身体検査
次に、聴診器を用いて肺の音を確認します。 特に、喘鳴(ヒューヒュー・ゼーゼーといった音)や呼吸困難の兆候など、呼吸音の異常がないかを丁寧にチェックします。
■ 呼吸機能検査(スパイロメトリー)
呼吸機能を測定する最も基本的な検査で、吸ったり吐いたりする空気の量と速度を評価します。 また、年齢・性別・身長から算出される標準値と比較し、一秒量(FEV1)がどの程度低下しているかを確認することで、おおよその重症度が分かります。
■ 画像検査(レントゲン・CTスキャン)
胸部レントゲンでは、COPDの方の肺が上下に長く、前後に厚く写る特徴がみられることがあります。 さらに、必要に応じてCT検査を行うことで、より詳細な肺の状態を確認できます。
COPDの治療
COPDは治療が難しい疾患ですが、適切な治療と管理によって症状を緩和し、生活の質を大きく向上させることが可能です。 また、薬物療法・呼吸リハビリテーション・酸素療法・禁煙・定期的な医療チェックを組み合わせることで、より上手に付き合っていくことができます。
1.薬物療法
治療の中心となるのが薬物療法です。症状を和らげ、さらに病気の進行を遅らせるために、以下の薬剤が使用されます。
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吸入薬:気管支拡張薬やステロイドを含む吸入薬は、気道を広げ、炎症を抑える効果があります。
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経口薬:テオフィリンやロイコトリエン受容体拮抗薬などが使用されることもあります。
2.呼吸リハビリテーション
呼吸リハビリテーションは、COPD患者さんの生活の質(QOL)を高めるための重要なプログラムです。 運動療法・栄養指導・呼吸法のトレーニングなどが含まれ、特に定期的な運動は筋力維持や呼吸機能の改善に役立ちます。
3.酸素療法
重症のCOPD患者さんには、酸素療法が推奨される場合があります。 酸素療法は血中の酸素濃度を保ち、呼吸困難を軽減するのに有効です。医師の指導のもと、適切な酸素量を調整することが大切です。
4.喫煙の中止
進行を遅らせるうえで、禁煙は最も効果的な方法のひとつです。 禁煙により肺機能の低下を防ぎ、治療効果を高めることができます。禁煙支援プログラムや薬物療法を活用することで、禁煙の成功率をさらに高めることが可能です。
5.定期的な医療チェック
進行性の疾患であるため、定期的な診察が欠かせません。 医師との継続的なフォローにより、病状の変化を把握し、治療計画を適切に見直すことができます。